世界遺産・中国の絶景『九寨溝』大自然とともに生きる人々

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湖水が語る悠久の時、中国最後の秘境・九寨溝。岐路に立つ大自然の迫力の映像とともに、地球の財産を残すべく努力する人々の情熱を伝えていく。【初回放送】2001年12月5日(水) 夜9:00~

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 標高3000m級の山々の奥に美しき地「九寨溝」がある。Y字に連なる渓谷には切り立った断崖に囲まれた「長海」、様々に湖底の色を変える「五彩池」、パンダが水を飲みに来るという「熊猫海」、扇状の台地から30mの落差で流れ落ちる「珍珠灘」など118の湖沼と17の滝がある。そしてこの渓谷を流れる水は、美しいエメラルドグリーンである。透明で信じられないほど青く透き通った水と、大自然によって作られた美術品の数々、始めて訪れるものにとってここはこれまで見たことの無い神秘の地であり、中国では九寨溝を「童話的世界」という。

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 九寨溝はチベット人の住む地域である。彼等は以前、放牧と農耕の生活を送っていた。九寨溝の観光地化に伴い彼らの生活も観光や開発を中心にしたものに変わっていく。番組ではチベット人家族、楊さん一家を取材。彼等の変わりつつある普段の生活とともに、原生林を何日もかけて行くチベット人パトロール部隊に密着した。高度4000mを越え、道なき道を進む22人の隊員たち、九寨溝では裸火などが禁じられているため、0度以下に冷え込む夜でも焚き火はできない。そんな中でも彼らは明るい。大声で歌を歌い、寒さしのぎに白酒を酌み交わす。「九寨溝を守っている。」それが彼らのプライドである。

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 九寨溝から一歩離れると、そこには昔ながらのチベット人の生活がある。一山越えたところに人知れずある絶景「神仙池」。ここはチベット人にとって“神の山”と言われる神聖な場所であり、ここの水も青く澄み、真っ白な石灰分が美しく神秘的な湖沼群を作っている。 神仙池の近くに住むチベット人たちは放牧・農耕という生活をしている。村にある井戸は三ヶ所。毎日女たちは急な坂を上り下りして水を汲みに行く。男たちは狭い石ころだらけの畑を耕す。立って歩けるようになれば子供も立派な労働力、彼らも重い薪を背に負って運ぶ。ここ数年、神仙池の開発が始まり、豊かな生活を望む彼らもそれを心待ちにしている。

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 人々の心を魅了する絶景を享受するには大きな犠牲を強いることになる。人々が豊な生活を求めるのは必然であるが、大自然を完全に封印する事はできない。その中で人々は「自然」に何ができるのであろうか。岐路に立たされている大自然を永久に守ろうとする人々の姿を伝えていく。