向田邦子が、教えてくれること ~山口智子と考える“絆”~

向田邦子が、教えてくれること ~山口智子と考える“絆”~

番組概要

~向田邦子が生きていたら、今の日本に何を想うだろう~

向田邦子がこだわり続けた“家族”。
女優・山口智子が、かつて演じた向田邦子の足跡を辿る旅。
作品の朗読を交えながら、向田の「伝えたいこと」を探る。
そして、その旅は山口智子の自分自身への問いにもなる。

没後30年、今なお輝き続ける人がいる。それは、小説家であり、脚本家でもある向田邦子(1929~1981)だ。未曾有の大震災により、絆(きずな)や家族の大切さ、そして孤独と共生について人々が考え始めた今、注目を集めている。

彼女は生前、「う」と記した引き出しに、お気に入りの「うまいもの」のしおりを入れていたという。全国の名店の漬物や菓子がそろう中に、福島県いわき市・丸市屋の貝焼があった。しかしこの貝焼は、今年は販売されなかった。震災でウニが入手できなかったためだ。荒れた海、破壊された町、断たれたきずな、失われた家族―。今、向田が現状を知ったら、何を伝え、何をしただろう。

災害に見舞われた2011年を経て、新たなスタートとなる2012年の年始。向田邦子に縁のある土地や人々を訪ね、作品の朗読を織り交ぜながら、日本人の原点と、人が生きる意味を考える。向田邦子を探る旅に出るのは、かつて彼女を演じたことのある女優・山口智子。生前に叶わなかった向田との再会を、ゆかりの地を巡る旅で果たすことになる。

2004年、生誕80年を記念して企画されたドラマ「向田邦子の恋文」で、 向田邦子本人に扮(ふん)し、家族への思い、父への思い、そして秘められた恋を情感豊かに演じた女優・山口智子。山口は今まさに、向田が必死に生きた40代後半にさしかかろうとしている。向田が書き続けた「家族」の形、そして生き方は、今の山口にはどう映るのだろうか。向田が生まれ、多くの時を過ごした東京と、多感な少女時代を過ごし、「故郷もどき」と表現した鹿児島を中心に、ゆかりの地と人々を訪ねる。

1981年、飛行機事故により51才の若さで生涯を終えた脚本家・小説家、向田邦子。その突然の死から30年が過ぎてもなお、生前の活動を知らない学生やOLたちにまで愛されている。そんな向田の足跡をたどる旅の始まりは、東京・青山。山口が輝ける青春時代を過ごした場所だ。当時の思い出を振り返りつつ訪れたのは、ある小さな書店。都会を象徴するような華やかな表参道の交差点に佇む、創業120年の山陽堂書店だ。かつてここには、向田が足しげく通っていたという。向田の残り香を追う。

激動の2011年が終わり、新たな歩みが始まろうとしている。向田が生きたのは、戦前・戦中・戦後、そして復興と経済発展の時代。これから再び日本が歩まなくてはならない時代と重なる。もし彼女が生きていたのなら、私たちに何を伝えるのだろう。家族を愛し、凛(りん)とした生きざまと作品は、われわれに多くのことを教えてくれる。

今、もう一度。作家・向田邦子が生き、愛した、美しい日本を考えてみたい。